株式会社クリーク・アンド・リバー社
クリエイター・エージェンシー・グループ
渡辺和宏さん
※所属・肩書は取材時のものです。
クリーク・アンド・リバー社は、クリエイター、すなわちゲームやWebのエンジニア、テレビのディレクター、映像や書籍の編集者、カメラマン、ライター、デザイナーなどが携わる、コンテンツのプロデュースや著作権のマネジメント、テレビ局や出版社、制作プロダクションなどコンテンツ制作会社へのクリエイターのエージェント(派遣・紹介)を行っています。そんな同社の中で、ゲーム業界で活躍する人材について、渡辺和宏さんに話を伺いました。
おススメ本
『ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち』
映像や出版、ITなどのクリエイティブ業界には、個人で仕事を請け負う、フリーランスと呼ばれる方たちがいます。フリーランスのクリエイターは、報酬がはっきりしないまま口約束で仕事を発注されることもあるなど、労働環境が整っていない面もあります。そこで、当社代表の井川は、報酬など請負条件の交渉や契約、営業を代行する会社があれば、クリエイターは自分の仕事に専念することができ、業界全体も活性化するのではないかと考え、当社を設立しました。なぜなら、井川自身もかつて、フリーランスの映像監督だったからです。
当社はまず、フリーランスのクリエイターの方に仕事を紹介して生活の安定をはかることから始めました。その後、クリエイターを当社の社員として直接雇用し、クライアントのもとに派遣するサービスも始めました。徐々に「クリエイターを抱えているのならコンテンツを制作してくれないか」という声も増え、最終的にはコンテンツ制作を行うようになりました。
プログラムを書くエンジニアが不足
こうした当社の様々な仕事のうち、今回は、社員・フリーランスを問わず、ゲーム開発に携わる仕事について、お話しましょう。
当社に限らず、ゲーム業界で今、一番不足している人材は、エンジニアやプログラマーと呼ばれる職種の方々です。同じエンジニアでも、ITを使って顧客である他企業の業務を支援するシステムインテグレーターやITソリューションと呼ばれる企業で働くエンジニアや、自社のIT環境を担う社内SEと呼ばれるエンジニアは、自分でプログラムを書くケースはあまり多くありません。一方、ゲーム業界のエンジニアは、コンピュータ言語を使って、自分でゲームのプログラムを書くケースがほとんどです。
また、同じコンピュータゲームでも、かつてはゲーム専用機を使ってプレイするゲームが主流でしたが、現在はスマートフォン(スマホ)を含め、オンラインゲームが主流です。そのため、Webサービスなどを提供するIT企業と欲しい人材が重なり、どの会社もエンジニアの採用には苦労しています。
プログラミング言語の学習は必要不可欠
次にゲームのエンジニアになるために必要な知識についてお話しましょう。ゲームのエンジニアにとってプログラミング言語の学習は必要不可欠です。プログラミング言語には様々な種類の言語があり、Webサービス、会計システムなど、コンピュータで何をするかによって、適した言語が異なります。
たとえ同じゲームであっても使用する言語は違います。ゲーム専用機で行うゲームでは、C#やC++という言語を使用しますが、スマホゲームにはJavaなどの言語を使用します。ほかにも、MacOSや、iPhone用のOSで動かすゲームにはObjective-Cという言語、他のコンピュータとのやりとり、すなわち通信が必要なプログラムを書く場合には、Web系のPHPやPythonと呼ばれる言語を使用します。
ゲームのエンジニアになりたい方は、新卒でも、何らかのプログラミング言語を大学で学んだことがあったり、趣味でプログラムを作ったことがあったりする方がほとんどで、全くの未経験でエンジニアになることはあまり多くはありません。
大卒であれば、情報系の学部・学科、次いで工学系の学部・学科出身者が多く、ほかの理系の学部・学科出身者でも、データ解析のために自分でプログラムを書いた経験がある方など、プログラミングの知識を持っていれば、エンジニアの道に進むことができます。
ただし、ゲーム業界はあまり学歴は関係がなく、知識・経験・技術力が評価される実力の世界です。
『ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち』
Paul Graham 川合史朗:監訳(オーム社)
アメリカのLispプログラマーであり、スタートアップ企業を対象にしたベンチャーキャピタル「Y Combinator」の創立者であるPaul Grahamが、2001~2004年の間にかけて自身のWebサイトに掲載したエッセイをまとめた書籍です。10年以上前の書籍ですが、非常に示唆に富んだ内容で「ハッカー (≒プログラマー)には技術力に加えて何が必要か。何を勉強するべきか」を考えるヒントになると思います。技術書ではないので手軽に読めますよ。
『東京トイボックス』
うめ(小沢高広:原作 妹尾朝子:漫画)(幻冬舎コミックス)
テレビ東京系列で放送されたドラマの原作で、ゲームの開発会社が舞台となるマンガです。ゲーム作りの理想と現実、そこで働く人の想いの一端に触れることができます。
※本記事は、就職支援会社株式会社学情の協力で、学情主催の大学生向けの「ゲーム×IT業界フォーラム」(17年2月20日、23日)においてのフォローアップインタビューにより作成いたしました。
◆参考・各業界がわかります→「あさがくナビ」の「業界MAP」