ジオスター株式会社
取締役常務執行役員 技術本部長
高松芳徳さん
コンクリートは、セメント、砂、砂利、水、混和材料(コンクリートの性能や品質を改良するために混ぜる薬剤)を混ぜて造りますが、これも、セメントメーカーが新しい材料を開発し、当社のようなコンクリートメーカーに提案します。最近では、セメントにスチールファイバー(鉄の繊維)やポリプロピレンというプラスチック系の材料を混ぜたUFC(ウルトラファイバー=高強度繊維補強コンクリート)があります。この材料を使えば薄くても従来と同じ強度が得られることから、当社では構造物の補修や補強に使う製品を設計・開発しました。
さらに、プレキャストの永遠の研究課題は、よりよい継手、すなわちセグメントを丈夫に、かつ簡単につなぐ方法や素材の開発です。継手の研究開発は、当社のようなコンクリート製品のメーカーだけでなく、ゼネコンや、継手の材料である鉄や鋳鉄の部材を造るメーカーでも行っています。
そしてプレキャストのもう1つの研究テーマに、環境にやさしい製品の開発があります。
例えば、セメント会社は「フライアッシュ」というゴミを焼却した際に出る焼却灰をコンクリートに混ぜた製品や、「スラグ」という、製鉄所で鉄鉱石から鉄を精錬する際に出る残り滓をセメントに混ぜた材料を開発し、私たちもそれを使った製品を造ってリサイクル社会に貢献しています。
カニが棲める穴を設けたコンクリート製品「カニパネル」を開発
また、当社には「カニパネル」という、河川や湖沼の護岸に使う製品があります。ゼネコンの鹿島建設の研究所が、東京湾のような内湾の水生生物の生態系を守るにはカニが重要であることをつきとめました。しかし護岸をコンクリートで覆ってしまうと、カニが棲息できなくなってしまいます。そこで当社は、保水性があり、カニが棲める穴を設けたコンクリート製品「カニパネル」を開発したのです。保水性コンクリートはほかに、都市部のビルの屋上に設置され、コンクリートに蓄えられた水分の気化熱によるヒートアイランド現象の緩和が図られています。