この仕事をするならこんな学問が必要だ<建設業界>

足場がはずれて建物が現れる時の感動は現場ならでは 〜建設現場をまとめる施工管理の仕事

株式会社安藤・間

首都圏建築支店 建築部 工事第一部 太田原作業所

所長 片本新司さん

※所属・肩書は取材時のものです。

第3回 幅広い建築工学の知識を基礎に。施工図の製図、安全など入社後に学ぶ知識・技能も多数

施工管理の仕事に必要な技術的な知識・技能としては、まず、建物の設計図を読んだり描いたりする力が必要です。意匠設計(デザイン)の図面を描くことはありませんが、意匠設計では細かいところまで図面を作成しないので、細かな箇所の寸法等々、現場で実際に施工するための施工図に描き起こします。私が若いころは自分で描いていましたが、現在は専門の会社に外注することが多くなっています。しかし施工管理者が施工図をチェックして、修正があれば指示しますし、職人さんが図面通りにつくったかを確認したり、間違えそうなところはあらかじめ注意したりします。

 

ほかにも鉄筋コンクリートの中の鉄筋の配置を示した配筋図、電気や空調、給排水など設備系統の図面など、様々な図面を扱います。

 

大学では設計や製図の授業はありますが、大抵は意匠設計の立面図や平面図しか描きません。したがって、新入社員のほとんどは、入社してから施工図を学ぶことになります。施工図は、誰が考えたのだろうと感心するくらい、建物が数字や記号でうまく表現されています。

 

施工管理の仕事でも構造の基礎知識は理解すべし

 

また、日本は地震や台風が多い国ですから、構造設計は非常に大切です。大学でも、構造力学や構造概論といった科目を学んだり、国が定めた構造設計基準を学んだりしますが、具体的にどのような計算をするかまでは学びません。4年生で構造系の研究室に入れば、計算するソフトウエアを使って建物の強度を模擬的に計算してみる大学はありますね。施工管理の仕事では構造設計はしませんが、構造図や構造の重要なルールを理解している必要があります。ほかに、力学、コンクリート、鉄筋、鉄骨など材料の知識や、土質工学の知識なども大切です。

 

安全に関する知識は重要

 

大学のカリキュラムでは見かけませんが、施工管理で大切なのは、安全に関する知識です。職場における労働者の安全と健康を守り、労働災害を防止することを目的とした「労働安全衛生法」という法律があり、それを厳守して、細心の注意を払って仕事を進めていきます。

 

建築工学の範囲は非常に広く、大学時代に施工管理に必要な分野を追加して学ぶのは、現実的には難しいでしょう。ですから、施工管理に必要な知識や技能は就職後に学ぶことがほとんどです。しかし大学で、建築工学の全体を学んでおくことは、建築に関する仕事をする上で意義があることです。

 

ただ、建築系の学部学科の卒業生の多くが施工管理の仕事に就いていますので、選択科目や講演などでQCDSE(Q=品質管理、C=コスト管理 D=工程管理 S=安全管理 E=環境管理)、施工図など施工管理に関係のある事柄を学ぶ機会があったら、是非受講してみてください。現場見学にも行くことをおすすめします。

 

運営:リベルタス・コンサルティング

 (協力:河合塾)

 

 

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