大成建設株式会社
技術センター 建築技術研究所 防災研究室
欄木龍大さん
※所属・肩書は取材時のものです。
建物やインフラ施設などの建設、整備を通じて、日本の成長を支えてきた建設業。安全・安心な技術、環境に配慮した技術、先端的な技術などで、これからも、社会インフラや人々が快適に過ごすための空間づくりで、持続的な成長を果たすことが期待される業種です。大成建設技術センター建築技術研究所の欄木龍大さんに、今後、社会への活用が期待される技術開発の動向や皆さんが専門的な知識を学ぶときのポイントについて伺いました。
おススメ本
『みんなが知りたい超高層ビルの秘密』
大成建設は、1873年に設立した創業143年の会社で、歴史に名を残す数多くの建造物を手掛けてきました。いわば、「地図に残る仕事。」を実現してきた会社です。
創業者の大倉喜八郎は、明治時代に欧米視察を行い、欧州の建築技術を学び、1883年に鹿鳴館を建設しました。1927年には、上野と浅草の間に東洋初の地下鉄を、また、1964年の東京オリンピック開催に向けて、東海道新幹線や日本初の超高層建物、ホテルニューオータニを建設しました。
1970年以降の高度成長期には、大きな国家プロジェクトへの参画が目白押しとなります。1985年、本州と四国を結ぶ瀬戸大橋、1987年には青函トンネル、1993年には日本一の高さを実現した横浜ランドマークタワー、2001年に野球とサッカーの両方で活用できる札幌ドーム、2010年には東京国際空港新滑走路などを建設し、つい最近では2014年に東京駅近くに大手町タワーとビル横に都心での生態系保全のために「大手町の森」を作ったことが話題になりました。
一方、海外に目を向けると、最近では2013年のボスポラス海峡横断鉄道トンネルの建設があります。このプロジェクトは、ヨーロッパとアジアを結ぶ、トルコ150年来の悲願の鉄道トンネルとして計画されました。このトンネルを建設するボスポラス海峡は、海底最深部60メートルということに加え、干満差が著しく上層部と下層部で海流がまるっきり正反対という厳しい施工条件です。この過酷な条件に対して、鉄筋コンクリート製の函体を沈設し、水中で接合するという工法を、世界で初めて適用して建設しました。1つのコンクリート函体の長さは110メートル~135メートルあり、これを1基ずつ海底に沈め、水中で接合します。この画期的な工法により、全体で11基を繋いで全長約1.4kmの海峡部トンネルの構築に成功しました。また、これから対応すべき大規模なプロジェクトには、東京オリンピック関連施設、リニア中央新幹線の建設などがあります。
こうした都市交通インフラ整備などの土木工事や、生活に関わりの深い施設や構造物の建設を通じて、皆さんが快適に生活できる空間を生み出し、社会に貢献することが、総合建設業(ゼネラルコントラクター:通称ゼネコン)の役割です。
『みんなが知りたい超高層ビルの秘密』
尾島俊雄、小林昌一、小林紳也(サイエンス・アイ新書)
高度な技術の集大成である「超高層ビル」に関して、超高層ビルの歴史から、施工方法、地震や火災に対する安全対策の方法、エレベータや室内空調など居住者が快適に建物を利用する仕組みまで、超高層ビルの秘密を図解と写真を使って一般の人向けにわかりやすく解説している。超高層ビルを通じて建設技術に興味を抱くことができる。
『理系のための研究者の歩き方』
長谷川健:編、鎌田俊英、坂部輝御、長尾祐樹、渋川雅美、麦人社編集部:著(麦人社)
大学の研究者になるにはどうすればいいのか。企業の研究開発者になるにはどうすればいいのか。何をやるべきか、やってはいけないことは何かなど、第一線の研究者が有益なアドバイスをしており、理系をめざす高校生に参考になると思う。