大日本印刷株式会社
情報イノベーション事業部 C&Iセンターマーケティング・決済プラットフォーム本部
土屋輝直さん
※2017年掲載。所属・肩書は取材時のものです。
銀行のキャッシュカードやクレジットカード、みなさんが持っている交通系ICカード。こうした、磁気やICチップが搭載されたカードを、大日本印刷(DNP)は作っています。実は、これは、印刷する文字や画像という情報を加工する技術の進歩や、高度な印刷技術が発展して生まれた製品なのです。大日本印刷が作るICカードに詰まった技術とその背景となる学問、今後の展開について、長年ICカードの開発に携わり、現在、Apple Payなどスマートフォンによる決済サービスの技術開発に携わっている、土屋輝直さんに伺いました。
印刷会社というと、書籍や雑誌など紙に印刷をする会社というイメージが強いことでしょう。しかし、大日本印刷(DNP)では、印刷の中に詰まった様々な技術を高める中で、様々なものに「印刷」をする事業を行っています。私が長年携わってきたICカード事業も、そんな事業の一つです。
カードは、銀行のキャッシュカード、クレジットカード、電子マネー、交通系ICカードなど様々な場面で使われており、カードに情報を乗せる媒体としては磁気とICチップがあります。
現在のカードの主流はICカードで、日本のICカードの約45%を製造しています。その中でも、銀行のキャッシュカードやクレジットカードは国内の圧倒的なシェアを占めています。
カード事業は、個人情報を扱うと同時に、カードは金券そのものであるため、ビザカード、マスターカード、ジェーシービー、アメリカンエクスプレスといった国際ブランドが認定する工場で、厳しいセキュリティの下で作られています。そして日本では数社しか各国際ブランドから認定されていません。
磁気やICチップの中に書き込まれた個人情報を守るため、一度カードを発行したら、工場からお客様一人ひとりにお届けするための簡易書留を用意し、郵便局に出すまでDNPが責任を持って担当しているのです。
偽造できない高度な印刷技術から
しかしなぜ、印刷会社のDNPが磁気カードやICカードを作っているのでしょう。その源流は、金券や証券といった、偽造できない高度な印刷を施すセキュリティ商材にあります。これがテクノロジーの進歩とともに、形を変えていったわけです。
また、現在の印刷はデジタル化されており、DNPも、1972年にはコンピュータによる組み版システムを導入しました。そしてデジタル化された印刷のプロセスは、前半がデータ処理、後半が印刷となります。デジタル化すると、印刷する文字や画像という「情報」はそのままでは使えないため、必ず加工します。この情報加工技術が、見えないところに情報を書き込む磁気カードにつながりました。DNPでは1973年から磁気カードの製造を開始し、これが時代とともにICカードに発展したのです。