今井元先生 元富士通/元日本女子大学 理学部 数物科学科
半導体デバイス、光デバイスが専門の、日本女子大学の今井元先生は、元富士通で、半導体レーザーの開発をしてきました。半導体業界をかつての日本のようにV字回復させる最新技術の可能性と、そのために必要な学問について、教えていただきました。
おススメ本『やさしい光技術』
半導体業界での仕事に必要な学問を、わかりやすく話しましょう。私は現在大学で、半導体デバイス、光デバイスを専門にしていますが、富士通では半導体レーザーの開発をしました。
半導体レーザーとは何か? 原理は、半導体に電流を流しレーザー発振させることですが、それによって発光する仕組みは発光ダイオード(LED)と同じです。違いは半導体レーザーの場合、共振器により特定の波長の光を強く放出できることです。
例えば、DVDには赤色レーザーが使われていますし、DVDの後継となる光ディスク、ブルーレイには青色レーザーが今後有望です。さらに紫外光領域までできれば、医療や工業機器等まで応用できます。紫外光領域の半導体レーザーはとても難しくて、まだまだです。将来、赤外光、赤・緑・青の三原色紫外光が揃えば、世の中全体を大きく変えるでしょう。
大学で学べる、半導体に必要な学問を話しましょう。半導体デバイスを扱うための学問として、まず電気電子工学を中心に、特に「電子デバイス・電子機器・半導体物理」分野の学問が必要になってきます。半導体レーザーの場合であれば、半導体の主材料のシリコン以外に幅広い、化合物半導体を勉強しなければならない。それには「化合物半導体」や「ナノ材料工学」の知識も必要です。
というのも、現在のシリコンをはるかに超える高性能半導体材料が研究・開発されているのです。例えば、フラーレンとかグラフェンといった言葉を聞いたことはありませんか。鉄より強くアルミより軽い、夢の新素材と言われる炭素繊維ですね。そのような今脚光を浴びているナノ材料の知識が必要になってくるんです。
しかし、実は、今の若い技術者に大きく欠けている学問があります。それは、「アナログ電気回路」です。アナログ電気回路は、工業高専や専門学校でも学ぶ、電気を利用する理論の基礎中の基礎と言えるものです。しかも、現在のようにデジタル電子回路(集積回路)が幅をきかせる時代にも、絶対必要な学問です。これが大学の学問から、ほとんどなくなっているんです。
例えば最先端のカーボンナノチューブに取り組んでいる若い技術者の間でも、「アナログ回路を勉強しときゃよかった」という半導体を作る現場の声をよく聞きます。大学の学問から消えても、企業の技術現場で必要不可欠なんですね。
アナログ電気回路は、半導体レーザーの場合にも必要です。レーザーの波長を外部回路で変えるのは、アナログそのものですから。半導体レーザーの波長可変の開発を目指すには、アナログ電気回路の勉強は、絶対必要です。
やさしい光技術
財団法人光産業技術振興協会(オプトロニクス社)
光通信、光ディスク、ディスプレイ、光計測、レーザー加工について、実験を用いてその技術を紹介する高校生向けDVD。私の担当は光の通信技術とレーザーが変える加工技術です。ちょっと古いですが原理の理解には十分です。光通信は今や日常に使われている技術です。それを構成する要素技術を、実験も含めて原理、使われ方を解説しています。レーザーを用いた加工技術については、その特長や、3次元加工技術、産業(医療分野も含めて)での使われ方を実例を示しながら解説しています。
とりわけ、光技術についてよく読んでほしいのは、光技術が日常で多くの場所に使われていること、光の応用は青色LEDだけでなく多方面で技術の集積であること、これらを支えてきた研究者に日本人が多いことなどです。今後もさらに発展する分野であり、ハード、ソフトの面から新しいアイデアをみなさんも参加して生みだして欲しいと思います。
中学・高校物理のほんとうの使い道
京極一樹(実業之日本社)
自然界の種々の現象について物理の法則や、簡単な計算式を用いて紹介しています。よくある説明なしで法則の用語を伝えるのではなく、詳しく知ろうとする者にとって導入の書となります。寝ころびながらではなく机に向かって読んで理解してください。
コズミックフロント
NHKの科学番組。宇宙の最近の話題について、簡単な物理の法則を用いてダークマター、ダークエネルギーをわかりやすく説明しています。なぜ、宇宙を知ることが大切かがわかります。
ロード・オブ・ザ・リング(映画)
古典的な通信技術に注目しています。