三菱マテリアル株式会社
中央研究所 都市資源リサイクル研究部 岡田智さん
※所属・肩書は取材時のものです。
三菱マテリアルの事業の基盤は、銅製錬とセメント製造ですが、むしろ当社で研究が活発なのは、他の最先端の研究開発分野です。本社中央研究所を中心に、各事業部とも密接に連携しながら開発に取り組んでいます。
同研究所が統括するものに、9つの材料関係の研究ジャンルがあります。例えば、超硬工具、電子材料、パワーエレクトロニクス、センサー材料研究等々…。多様で変化のスピードが早いユーザーニーズを先取りしながら、伝統のある材料分野での研究開発をはじめ、自動車、情報エレクトロニクス、環境・リサイクル、エネルギーなどの分野の研究開発に取り組んでいます。これだけ幅広くマテリアル研究を進めるのはおそらく当社だけでしょう。
研究について説明しましょう。超硬工具は、車のエンジンの切断やシェールガスの掘削、シールドトンネルを掘るときの固い岩盤を砕く刃などに利用され、世界をリードしています。
センサー素材の最近のトピックでは、世界最薄、折り曲げ自在のフレキシブルな温度センサーを開発しました。この温度センサーは、スマートフォンやパソコンなどの電子機器、エアコンをはじめとした家電や自動車等、様々なものに使われています。
半導体の小型化を支える、50ミクロンのはんだペースト
これぞマテリアル研究という仕事の醍醐味について話しましょう。当社では電子材料用の材料として、半導体の基盤を作る際に使う、なんとわずか径50ミクロン!というはんだペーストの開発に成功しています。はんだとは、金属同士を接合したり、電子回路で、電子部品をプリント基板に固定したりするために使われます。それは金属を溶かして高圧で噴霧するという方法で、もともと銅製錬・リサイクル技術の延長から生まれたものです。半導体の集積回路はどんどん小型化し、それくらいミクロのはんだでないと基盤の上に使えないのです。
みなさんはめっきとコーティング技術の違いをご存知でしょうか。どちらも金属表面を薄膜で覆うということでは同じですが、作り方が全然違います。めっきは、電気分解で、水溶液中のイオンを還元することによって金属表面に薄膜を作るやり方です。これにコーティングは、水を使わずに薄膜を作る。コーティングをすることによって、例えば超硬工具に用いる固くて長持ちする材料が生まれます。そこが大きな違いです。
昔からのめっき塗装を研究する電子材料研究部という部門もあれば、超硬工具の強度の増すためのコーティングを研究する薄膜研究部という部門もある。三菱マテリアルの研究開発部門の仕事には、工学部の無機化学系の人材にとって、こたえられない研究が数多くあるのです。
『レアメタル超入門』
中村繁夫(幻冬舎新書)
近年盛んに資源危機が叫ばれるレアメタル(希少金属)資源についての入門書。タンタルやニオブ、コバルトなど携帯電話やデジカメの小型化に不可欠であるが、資源は局在している。商社の資源部門でレアメタル資源の日本の草分けである著者が、各国の資源争奪状況や日本の置かれている状況について述べ警鐘を鳴らしています。