この仕事をするならこんな学問が必要だ <自動車業界>

自動車産業から学ぶ、ものづくりの技術

〜装置・部品・材料メーカーが持つノウハウが日本の技術を支える

株式会社ニッキ元社員

松尾宏さん

第3回 振動、熱衝撃等、多様な角度からの信頼性試験

自動車エンジン用キャブレターの実験を担当するなどした後、私は信頼性試験に携わることになりました。1975年頃から、自動車用部品の開発は、部品メーカーで完結するよう要請があり、これに伴い、試験装置の整備を進めました。

 

キャブレターはエンジンに装着されるため、キャブレターの中にあるスロットルバルブの作動耐久試験(100万回)、振動耐久試験(200Hz×20G×100時間)、熱衝撃試験(-20~130℃)、塩水噴霧試験(35℃、5%塩水、72時間)が基本となり、その他に、自動車メーカーごとの追加試験がありました。

 

部品の破損は共振が最も危険、耐熱衝撃には材料の検討が重要

 

作動耐久試験では、キャブレターの中のパーツ1つひとつの力のかかり具合が耐久性に影響します。振動について言えば、例えば、自動車の上下振動によってフロートというパーツに共振が起こると油面があふれてしまいます。フロート質量、浮力によるバネ定数、ガソリンとフロート側面の粘性を考慮し、フロート共振が起こらないように対策します。

 

また、エンジンの振動は、アイドリングから高速まで変化しますが、振幅0.25mm(p-p)一定、20~200Hz(600~6000rpm)と仮定し、部品単体の共振調査を行います。振動は共振(固有振動数)が最も危険で、部品の破損が発生しやすい条件です。

 

次に熱衝撃試験です。キャブレターは、鋳鉄(今はアルミ)、亜鉛、アルミダイキャスト、バネ、ねじ、ゴム、電線等、熱膨張係数や耐熱性が異なる材質を使用しており、実用性確認が必要です。

 

塩水噴霧試験では部品の耐食性を確認します。異種金属が接触し塩水が介在すると局部電池が発生し、腐食を促進させるためで、船舶用製品には表面処理を行います。

 

最近では、環境温度を変化させながら振動試験を行う、といった複合試験を行うこともありますが、主原因を取り除くための対策することが肝要です。

 

国際的な品質マネジメントシステム認証取得で信頼を得る

 

次に私が携わったのが、品質保証の仕事で、お客様対応、協力企業監査、ISO9001、ISO14001、QS-9000の立ち上げ等の業務に携わりました。

 

ISOというのは、ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)による品質マネジメントシステムのことで、ISO9001は、顧客に提供する製品・サービスの品質を継続的に向上させていくことを目的とした品質マネジメントシステムの規格です。具体的には、文書管理、経営者の責任や仕事、設備や作業環境が適切か、設計開発の手順、品質保証のプロセスが明確かどうか、などが問われます。ISOは国際規格ですので、この規格を取得すると、国際的な信頼を得ることができます。

 

ISO14001は、サステナビリティ(持続可能性)の考えのもと、環境リスクの低減と経営の両立を目指す環境マネジメントシステムに関する国際規格です。こちらも、社内の環境方針を策定し、それに基づいてマニュアルを作成、運用し、評価します。具体的には、社内で購入するファイルは、金具と紙を分けやすく破棄しやすいものを購入するといったところから、1つひとつ社内のルールを定めていきます。

 

QS-9000というのは、アメリカのクライスラー、フォード、ゼネラルモーターズの製造者を中心に制定された、自動車産業における品質システム要求事項の規格です。なお、現在は、QS-9000を母体に、フランス、ドイツ、イタリアなどの自動車の規格を統合したISO/TS16949という規格に移行し、ニッキも2007年にISO/TS16949の認証を受けました。

 

運営:リベルタス・コンサルティング

 (協力:河合塾)

 

 

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