「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」に参加して考えたこと

アクティブラーニング以上に、社会につながる姿勢が生み出す、高校の教育力と社会的意義

〜産業界になかなか理解されない、工業高校や教科「情報」の存在

神谷弘一先生 全国高等学校長協会/愛知県立豊田工業高等学校長

第4回 知られていなかった、高校の必修「情報」

〜産業技術に関心を持たせられる可能性として、検討を

 

円卓会議に参加して感じたことは、大変スケールの大きな会合だということでした。そのためもあるのでしょうが、理工系人材育成のために、高等教育と産業界に何ができるか、という点に関心が向いていました。確かに初中等教育が大事という議論は出ましたが、それも小学校の話が中心でした。高校、ましてや工業高校という括りでの議論への発展は、少なかったと思います。

 

普通科高校には、産業界や産業技術に触れる科目は、ほとんどありません。ただ、そのような中でも、教科「情報」が必修科目としてありますが、それ自体、委員の皆さんは詳しくお知りにならないようでした。ただ、この教科をどう充実させるかは大きいと思います。

 

しかし現状は、物理や数学、英語などの科目と比べても、情報教員の得意分野によって教える力点がまちまちで、統一されていない感じがしています。大学入試として採用されていないこともその理由の1つでしょうが、何を教えるべきか、高校での教科「情報」を再定義する時期に来ているのでないでしょうか。

 

私は1995年頃から、工業高校や商業高校などの専門高校生を相手に情報処理教育センターというところで、情報スキルを教えるという経験をしています。window95が発売されてインターネットが普及する直前の時代でした。普通科高校にはまだ教科「情報」がない時代で、専門高校生は卒業後、就職先ですぐに役立つような、実務的な内容を教えたのです。当時、工業高校ではC言語を、商業高校ではビジュアルベーシックを学ぶというプログラミング言語の2極化が起こり、難しい時代だったと記憶しています。

 

長年見てきたその経験から、私は、教科「情報」は、「情報技術」に特化していくのが良いのではないかと考えています。今、世の中で最先端の情報技術がどうなっているかを、若い人に、まず教えることが必要だと思います。例えば、ポイントカードは、ポイントが貯まると何かがもらえるということは誰でも知っていますが、その情報が、ビッグデータとしてどう使われているのか、教えてくれません。ソフトバンクのPepper君は空気を読んで会話することがすごいともてはやされていますが、人間のように自分で考えてしゃべっているわけじゃないという、コンピュータでできることの本質を、高校生に、もっとちゃんと教えるべきだと思うのです。

 

何が本当に必要なのか、情報を、技術に絡めて、その本質に迫っていくというのが、大事だと思うのです。そのためには、情報の本質をまず教える。それによって、科学的な見方や考え方を養い、そこから派生してプログラミングやアプリ開発、オフィスアプリケーションの実用的な使い方に落とし込んでいく。そういうことが必要なのでないでしょうか。

 

 

おわり

 

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