「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」報告
グローバルに活躍する「次代の博士」の養成
~博士課程教育リーディングプログラムの取組~
文部科学省 大学振興課長 塩見 みづ枝氏
(第1回「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」より)
文部科学省が策定しました、「理工系人材育成戦略」の重点1に、「理工系プロフェッショナル、リーダー人材育成システムの強化」という項目があります。ここでは、強化のための取組の一つである、「博士課程教育リーディングプログラム」について、紹介いたします。
まず、現在、我が国における博士号取得者の状況を確認いたします。下図は、主要国における人口100万人当たりの博士号取得者数ですが、日本の博士号取得者数は外国に比べて低水準である上に、さらに数が減少傾向にある状況です。
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企業の研究者に占める博士号取得者の割合を見てまいりますと(下図左のグラフ)、日本は他国に比べて極めて低い状況にあります。また、日本の企業役員等の最終学歴を見ると、大学院卒が占める割合はわずか5.9%であり(下図右の表)、アメリカの場合と比べて、少ないことがわかります。
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それでは、なぜ民間企業が博士課程修了者をなかなか採用しないのかと言えば、下記の調査結果からしますと、「特定分野の専門知識があっても、企業ではすぐに活用できない」、あるいは、「社内の研究者の能力を高める方が博士修了者を採用するよりも効果的である」というのが理由のようです。
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製造業において、新卒採用の際、博士課程修了者に対して特にどういう能力を重視しているか尋ねた経済同友会の調査があります。それによると、多くの製造業が、専門知識・研究内容、あるいは論理的思考力といった力だけではなく、熱意・意欲、行動力・実行力、チームワーク力を求めています。
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こうした状況を踏まえ、文部科学省で実施しておりますのが「博士課程教育リーディングプログラム」という事業です。従来の博士課程教育は、下図の左側にありますように、アカデミアの研究者養成を主目的として、かなり専門分野を深く細分化した形で研究を行っていくというものでした。それに対し、今回のリーディング大学院は、専門分野の枠を超えた、博士課程前期・後期一貫したプログラムで、俯瞰力や独創力を備え、広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成することを目標にしています。国内外の多様なセクターから第一級の教員を結集すること、また、産学官の参画による国際的・実践的な研究訓練の場を設けることを特色とし、こうしたプログラムを通じ、熱意・意欲、行動力・実行力、チームワーク力を備えたタフなリーダーとなる次代の博士を育成しようというものです。
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現在、リーディングプログラムの採択は、33大学62拠点で行っております。
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事例として、現在、慶應義塾大学で展開している「超成熟社会発展のサイエンス」というプログラムを紹介します。慶應義塾大学の13研究科から選抜された学生が切磋琢磨する、5年一貫の教育システムで、この中で文理融合の新しい博士を育成していこうと、文理にわたる修士号を二つ取るということ、併せて博士を取っていくという非常に意欲的なプログラムです。
企業や行政体の現役部長クラスの方々にメンターとして参加していただき、少人数の個別演習や、全員による全体討議などを行うなど、極めて実践的なプログラムが用意されています。また、1年目は短期の海外インターン、2-3年目には海外でのフィールドワークやお試し研究留学、4年目には半年の短期留学など、計画的な海外派遣も行っています。
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「博士課程教育リーディングプログラム」事業は、平成23年度から開始され、本年で5年目となり、いよいよ第1期生が本年度末に修了いたしまして、社会に飛び立つ予定になっています(平成27年度末修了生数(見込み):約350名、平成28年度末修了生数(見込み):約620名)。
プログラムに関しては、海外のインターンシップ先企業などからも、高い評価を頂いてきているところです。また、下図のように、様々な分野で多くの成果も上がってきています。こうした新しい時代の博士の育成に、関係の皆様にもぜひ御理解していただき、新しい博士がいろんな分野で活躍できるように、ぜひ御支援いただければと思います。
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