「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」報告
高等学校における産学連携事業について
神谷弘一先生 愛知県立豊田工業高校校長(全国高等学校長協会)
(第2回「理工系人材育成に関する産官学円卓会議」より)
本校で取り組んでいる大学、産業界、他校との連携事業についてお話いたします。
文部科学省では、専門高校において、大学や企業との連携を図り、高度な知識・技能を身につけ、社会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成することを目的とする「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール」事業を実施しています。本校では、平成26年度から、「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール」事業の指定を受けています。
愛知県は工業出荷額が全国1位で、とりわけ本校が所在する豊田市は自動車産業を中心とした産業が大変盛んなところです。そのため、本校は、自動車産業をターゲットとし、次世代の産業に必要な知識、技術・技能を、実践的に身につけ、なおかつ、グローバルな視点を持つ、創造性豊かな技術者、技能者を育成すべく、スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール事業にあたっております。
大学との連携
本校には、地元の大学と連携した、課題研究という科目があります。課題の発見・解決に向けて、生徒がアイデアを練って、主体的・共同的に学習を進めていくもので、いわゆる、アクティブラーニングを中心に、授業を展開しています。
具体的には、愛知工科大学と連携した「缶サット甲子園」の取り組みがあります。350mlのジュース缶にコンピュータや計測機器、通信機器を詰め込み、模擬人工衛星として製作、実際に50m上空から放出しミッションを行い、結果データを分析してプレゼンテーションまでを行う競技会です。今年は、「光を利用した惑星環境の分析と考察」というミッションを自分たちで設定し、それに向けて、チームで取り組みました。また、それに際して、実践・評価・改善、いわゆるPDCAのサイクルを大学に出向いて勉強してきております。
他には、愛知工業大学と連携し、「ホバークラフトの製作」や「カーデザインの研究」を行いました。ホバークラフト製作では、大学の機械学科の先生と、流体工学なども学びながら、製作体験をしております。カーデザイン研究では、実際に1/10サイズのクレイモデルを作り、大学の風洞実験装置を見せていただき、自分たちでなんとか風洞実験装置を作りました。
異校種との交流
工業高校の役割の一つとして、地域でのものづくりに関して様々なことを発信する拠点になるべきであり、そのような観点から地域の住民や子どもたちに工業高校の学習内容を理解していただく活動を行っています。
例えば、幼稚園に出向き、設備の修理や修繕することを通じて、自分たちの持っている技術・技能で地域の貢献を行い、一方、自分たちより年齢の低い子どもたちとの遊びを通じて、どのようにコミュニケーションを取るかを学ぶという取り組みです。
同様に、小学校にも出掛け、生徒が先生となって子どもたちを指導する「ものづくり教室」を行っています。小学校4年生にペットボトルロケットを作ってもらい、一緒にグラウンドで飛ばすというようなことを行いました。生徒たちには、「子どもたちに、できあがった時の喜びや感動を体験してもらい、ものづくりに興味・関心を持ってもらえるようにしてほしい」と言っております。
企業との連携
本校を卒業する生徒は、9割弱が就職をします。多くが地元の企業への就職ですが、そうした中で、生徒が工業高校で得た知識、技術・技能が実際の企業活動とどのようにつながっていくかを学ぶために、企業と連携して学校の授業を通して必要な技術・技能を身に付けさせています。これが将来、理工系人材としてものづくりの分野を担う人材を、高校と企業が共同して育てていく、こういうシステムを持った社会となるような試みをしております。
具体的には、企業から高度な技能を持った方に学校へ来ていただいて、実際に学校の機械を使って、生徒の目の前で加工実演をしていただきます。また、昨年は技能五輪が愛知県で開催されましたが、技能五輪出場経験者による卓越した技能を見学しました。そうしたことにより、生徒のものづくりへの興味・関心がよりいっそう高まるだろうと考えております。
他には、燃料電池自動車を学校のほうに持ってきていただき、燃料電池自動車の構造や仕組みなどの講義をしていただく。あるいは、トヨタ自動車様のほうから、チーフエンジニアの方に来ていただき、環境対策技術など、新しい自動車の技術について講義をしていただくという機会を設けています。また、生徒が実際に企業の職場で、知識や技術・技能を習得する目的で就業体験も実施しています。